生物:
放射線耐性菌Deinococcus radiodurans曝露実験:
D. radioduransは「たんぽぽ初号機」の3年間曝露後にも生存することが確認された。また、遺伝子欠損株の曝露からDNAの修復機能が生存に係ることも明らかになった。さらに、酸化ストレスからの防護機能も生存に係ることが示唆された。酸化ストレスからの防護にはMn含有タンパク質が係ることが考えられたため、Mn欠乏培地で培養したD. radioduransを宇宙曝露することで、Mnの効果を明らかにする。
陸棲ラン藻・コケ植物曝露実験:
陸上植物の中で極めて原始的なコケ植物が、レゴリス上で繁茂可能であれば、藍藻と同様に火星地表での利用も考えられる。地上の生物素材として、樹皮成分は地上生物にとって脅威となる紫外線防御や樹皮成分を利用した構造物接着成分としての活用が期待できる。そこで、①樹木樹皮の変性(Prunus yedoensis);樹皮成分の利用の可能性(CosmoBon)、②コケ(Physomirella patens)の宇宙環境下における成分の変性(EXMOSS)、③藍藻(Nostoc sp. HK-01)およびコケ(Physomirella patens)の火星レゴリス土壌化の検証(RCM)を目指し、宇宙曝露による変性する物質と紫外線との関係を考察する。
イネ種子曝露実験:
抗酸化物質が太陽光曝露イネ種子の生存能力に及ぼす影響を明らかにするために紫米と白米の種子を宇宙曝露する。これまでに、BIORISKプロジェクトにおいて、ISS船外に20ヶ月間曝露したイネ種子は13ヶ月間曝露したものより発芽率が7倍低下し、発芽に関連する貯蔵型mRNA量が有意に減少した。また、EXPOSE-Rプロジェクトにおいて、ISS船外に18ヶ月間曝露したフラボノイド欠損シロイヌナズナ種子は野生種より発芽率が6倍低下した。これらの知見をもとに、着色米の表面を覆う抗酸化物質がISS船外太陽光曝露下での種子生存率維持と貯蔵型mRNAの安定性に寄与するかを明らかにする。
宇宙塵捕獲用シリカエアロゲル
曝露実験装置
「たんぽぽ」と「QCC」の2つの実験を統合し得られた研究成果を補完・拡充する
*シリーズ実験の為装置の基本設計は同じ
*2019年夏秋より1年間の曝露を予定
たんぽぽ計画(たんぽぽ1)では、大小さまざまな衝突痕(トラック)を得た。
粒子が明瞭なもの、そうでないものがあった。
たんぽぽ
●疎水性表面
たんぽぽ2
●親水性表面のエアロゲルを新規に作成し追加
●「海洋天体プリューム捕集分析」へ向けた改良
微生物
放射性耐性菌:
シアノバクテリア:
菌の厚さに依存した生存性
表面の菌が防御剤となり内側の菌は生存
遮光試料は蘇生、増殖・分化能を確認
太陽光照射環境では、波長依存が強そう
たんぽぽ2:
窓材の変更により、波長依存性を確認
試料厚さのバリエーションを増加
有機物
アラニン線量計:
紫外線光量測定に成功
試料容器内では、ほぼ均一な照射を確認
ジペプチド生成が示唆
たんぽぽ2:
ジペプチド生成のさらなる検証
同位体ラベルによる生成確認の精度向上
共重合体の生成を検証(生理活性発現へ)
ジペプチドからさらに長いペプチド生成へ
有機物
アミノ酸・前駆体:
複雑有機物の宇宙環境耐性を確認
グリシンが地上実験による予測より安定
低分子前駆体であるヒダントインが地上実験による予測より不安定
波長依存性
(吸収スペクトルと太陽光スペクトルの積)
試料の蒸気圧
(ヘキサトリアコンタン膜厚との関係)
たんぽぽ2:
ヘキサトリアコンタン膜厚のバリエーションを増加
窓材なしの曝露の追加→QCC型曝露
主に炭化水素(特にQCC)に対する曝露実験からは、
炭素質隕石物質中の不溶性有機物(IOM)に共通する性質の獲得
急冷窒素含有炭素質物質
研究対象の拡大
炭素質ナノ粒子の宇宙風化と星間有機物進化の実証研究
実験生成有機物の宇宙曝露による宇宙ダストの性質の理解
試料数の増加
64→100曝露面裏側の利用
小天体有機物の宇宙曝露実験
隕石有機物や模擬物質の構造変化を調べ、宇宙風化の影響を明らかにする
窒素含有炭素質物質の宇宙曝露実験
新星周囲で形成される赤外特性を良く再現する急冷窒素含有炭素物質を曝露し、原始太陽系有機物との比較を行い、終焉期の恒星起源有機物が始原的な太陽系有機物の一部なる仮説の検証を行う
アミノ酸およびその関連物質の宇宙曝露実験
宇宙に存在しうるアミノ酸関連有機物の宇宙塵環境下での安定性と構造変化を明らかにする
2019.4
実験装置引き渡しTeam→JAXA→NASA
2019.7.26
打ち上げ
2019.8.8
曝露開始
2020. 夏~秋
曝露終了
2020. 秋~冬
引き渡し・分析開始
© TANPOPO Project